デザイン思考は、デザインの制作過程の中だけでなくさまざまなビジネスシーンでも応用して取り入れられています。その定義や具体的なプロセスについてご存じでしょうか?
この記事では、デザイン思考の基礎知識やプロセスについて解説します。
目次
デザイン思考とは?
デザイン思考とは、デザイナーが制作過程の中で用いる思考方法のことです。
ユーザーのニーズや目的を相手目線で考え、試作と改善を繰り返していくプロセスを、ビジネスにおける問題解決・イノベーションの推進などに応用する企業やビジネスパーソンが増えてきています。
AppleやGoogle、Yahoo!といった大企業・グローバル企業が取り入れているこの思考方法は、今後さらに一般化していくことが予想されています。
デザイン思考とアート思考の違い
デザイン思考と混同されがちなアート思考ですが、両者にはアイデアを創出する際の前提条件に明確な違いがあります。
思考方法 | 概要 |
---|---|
デザイン思考 | ユーザーやクライアントのニーズ・目的を踏まえたうえで、それに沿ったアイデアを創出する |
アート思考 | ユーザーやクライアントのニーズ・目的は一切考慮せず、自由な発想でアイデアを創出する |
両者はどちらか一方が優れているというわけではなく、場面によって思考方法を使い分けることが大切です。
例えば、既にあるビジネスの売上アップなどを狙うのであれば、ユーザーのニーズに寄り添う形で思考を深めていくデザイン思考の方が適切でしょう。
対して、今はまだ存在しない全く新しいビジネスを生み出すのであれば、アート思考で独創的なアイデアを創出する必要があります。
デザイン思考が求められている理由
デザイン思考が求められるようになった背景には、近年の急速な市場構造の変化があります。
現代は変動・不確実・複雑・曖昧を意味するVUCAの時代であるといわれており、従来の仮説検証型のアプローチが通用しなくなってきています。
技術革新が急速に進み、人々の価値観が多様化している現代社会は、数年前・数十年前と比較すると非常に複雑であり、不明瞭で不確実です。
そんな社会状況の中、従来の仮説検証型の思考プロセスよりも、次章で紹介するデザイン思考のプロセスを踏んだ方がイノベーションを起こしやすいと考えられています。
デザイン思考の5つのプロセス
デザイン思考は、以下の5つのプロセスに沿って進めていきます。
①共感(Empathize) ②定義(Define) ③概念化(Ideate) ④試作(Prototype) ⑤テスト(Test) |
①共感(Empathize)
デザイン思考の最初のステップである「共感」は、ユーザーのニーズや課題を汲みとるフェーズです。
ユーザーを観察したり、インタビューやアンケートで意見を吸い上げたりしながら、相手への理解を深めていきます。
また、インタビューやアンケートをおこなう際は、プロダクトのターゲットに沿った人物・属性を対象とし、目的を定めて取り組むことが大切です。
自身の思い込みや願望は捨てたうえで、吸い上げた意見をユーザーと同じ視点で捉える必要があります。
②定義(Define)
ユーザーから吸い上げた意見に共感し、その内容をもとにユーザーのニーズや課題を定義します。
また、ユーザーの意見だけを鵜呑みにするのではなく、その奥にある潜在ニーズ・課題にも着目することが大切です。
定義がうまく定められない場合は、共感のステップに戻って再検証することも必要でしょう。
③概念化(Ideate)
次に、定義したニーズ・課題を解決する方法やアイデアを出し合うのが概念化のフェーズです。
このフェーズでは、ブレーンストーミングを実施たり、ビジネスのフレームワークを用いたりすると有効なアイデアを導き出しやすくなります。
ここでは質よりも量を重視し、より複数のアプローチ方法を立案できるよう努めましょう。
④試作(Prototype)
概念化のフェーズで導き出したアイデア・アプローチ方法を元に、それを具現化して試作品を開発します。
いくつか出たアイデア・アプローチ方法の中から、特にチーム内で支持を得たものや、コスト・時間がかからないものを優先して試作してみましょう。
実際に試作して形にしてみることで、思わぬ発見を得られるかもしれません。
その発見を得ることで、より良いプロダクトの完成に近づくことができます。
⑤テスト(Test)
試作品が完成したら、ユーザーテストをおこない課題や改善点を炙り出していきます。
試作品の操作性・使い心地はもちろん、初期段階で定義したユーザーのニーズ・課題が正しかったのか否かも確認することが大切です。
テストで得たフィードバックを元に新しい試作品を作り、再びユーザーテストをおこないます。
この①から⑤までの流れを必ず順番どおりにおこなう必要はなく、時には前段階のフェーズに立ち戻ったり、複数のステップを同時進行で進めたりしながら、質の高いプロダクトの完成を目指しましょう。
また、デザイン思考には「ダブルダイヤモンド」という概念・思考方法も存在します。
下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
>>>>デザイン思考におけるダブルダイヤモンドとは?実践的なプランも紹介!
デザイン思考と組み合わせて使いたいフレームワーク
最後に、デザイン思考と組み合わせて使うことで効力を発揮する便利なフレームワークを2つ紹介します。
SWOT分析 共感マップ |
SWOT分析
SWOT分析は、デザイン思考でユーザーのニーズ・課題を抽出しつつ、市場における自社のポジションを明確にする際に便利なフレームワークです。
- 優位点(Strength)
- 課題(Weakness)
- 機会/市場変化によるプラス要因(Opportunity)
- 外的脅威/市場変化によるマイナス要因(Threat)
上記の4つの項目を整理し、理解を深めることで、より有効な事業戦略の立案に役立てられます。
共感マップ
共感マップは、デザイン思考の「共感」のフェーズで役立つフレームワークです。
- 見えていること(SEE)
- 言っていること/行動していること(SAY AND DO)
- 考えていること/感じていること(THINK AND FEEL)
- 聞こえていること(HEAR)
- 痛み・ストレスに感じていること(PAIN)
- 得られるもの・欲しいもの(GAIN)
上記の6つの基本要素を整理することで、ユーザーへの理解・共感を深められます。
まとめ
デザイン思考とは、デザイナーが制作過程の中で用いる思考方法のことです。
①共感(Empathize) ②定義(Define) ③概念化(Ideate) ④試作(Prototype) ⑤テスト(Test) |
上記のプロセスに沿ってユーザーへの理解を深め、制作・テストを繰り返していくことで、VUCAの時代といわれる現代においてイノベーションを起こせるプロダクトの開発が期待できます。
今後さらに注目が高まっていくことが予想されているこの思考方法を、ぜひ早い段階で取り入れてみてください。
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